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すいかのいちばん甘いところ

秋生まれ

「すいかは先っぽがいちばん甘いよ」

我が家ではすいかはわりと細かく切り分けられて、とんがりコーンみたいな傾斜の三角形になって出てきていたので、母はいつもこう言っていた。そして私はいつも最初の一口を特別ていねいに食べていた。

小さい頃からずっと、すいかは先っぽが甘いと信じていたのだけど(そしてそれは事実なのだけど)、その先っぽがすいかの「真ん中」なのだと気づいたのはすいか割りをしていたときだった。

甘い部分がみんなに行き渡るように、昔の人が働かせた知恵なのだろう。

去秋から一人暮らしを始め、大きな果物を食べる機会がうんと減り、切って器に盛られた果物が、家族の幸せの象徴だったんだなと思うようになった。

私はこれまで、すいかを切ってもらって、それをむしゃむしゃとただ食べている側だった。たぶんあと少ししたら、すいかを買ってきて、それを食べる皆が甘さに無心でかぶりついている様子を想像してうれしくなりながら、すいかを切り分ける側にまわるのだろう。

そんなすいかを切るひとになったときに、見える世界はいまとどう違っているのか。すいかの先っぽが真ん中なんだと気づいたように、なにか新しい見え方がするんだろうか。